【川崎重工】バッテリートラム「SWIMO」の特徴

札幌LRTの会

2007年12月24日 15:04

最初に完成予想図を見た時は「長崎の低床車に似てるなぁ…」と思ったのですが、実際には外観もシステムもかなり異なったものになったようです。川崎重工業(株)の「ハイブリッド市電」ことバッテリー駆動式低床路面電車(LRV)「SWIMO(スイモ)」の特徴を、長崎の車両と比較しながら簡単にご紹介しましょう。


(左)長崎電気軌道3000形/(右)川崎重工業SWIMO-X
ノンステップ低床車を設計するにあたって、最もネックになるのはモーターの配置です。
通常の電車であれば床下に難なく収められるのですが、床下からレール面までの空間が極端に少ないノンステップ低床車では床下搭載は事実上不可能で、何らかの方法でモーターを逃がしてやらなければなりません。そのあたりの両者の工夫を下図に整理してみました。
(下図はシステムの概念を模式的に表したもので、車両構造を厳密に表したものではありません)


【長崎電気軌道3000形】
●アルナ車両(株)開発の「リトルダンサー」と呼ばれる低床車両です。運転台の下にモーターを配し、そこからシャフトを介して客室床下の台車に動力を伝えています。
●台車は3車体のうち、前後の車体にのみ装着。中間車体に台車は無く、「籠」のように前後車体に支えられています。


【川崎重工業SWIMO-X】
●モーターを搭載した台車そのものを客室部分の外(運転台の下)に逃がしてしまった構造です。それでも先頭台車の2軸(4輪)のうち1軸(2輪)は客室部分(乗降口)に支障する為、その部分のみはモーターを搭載しない極小径車輪として対処しています。
●台車は3車体全てに装着していますが、中間車体のものにはモーターは搭載されておらず、車体重量を支えているのみです。

鉄道総合技術研究所(鉄道総研)の「Hi-tram(ハイ!トラム)」があくまでバッテリー・ハイブリッドシステムの試験に特化し、車両そのものは既に他都市(伊予鉄道)で実績のある車両メーカーの技術をそのまま流用しているのに対して、「SWIMO」はそれ自体の商品化を目的として、車体・台車構造等も含めて独自の新機軸が多く盛り込まれているのが特徴です。ハイブリッド技術のみならず、このような観点からも今後の展開に大いに注目したいところです。(鈴木周作

◎参考文献:長崎「電車」が走る街今昔(JTBパブリッシング)/台車近影(ネコ・パブリッシング刊「レイルマガジン」誌ブログ

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>>【札幌LRTの会】だれでもわかるハイブリッド/バッテリートラム

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